2015年11月17日火曜日

よかれと思って


幼かったころ、祖母がお土産でハンバーガーを買ってくることがありました。そんな時、私は大いに喜び、包装紙に残ったソースまですすって食べたものです。40歳をとうに過ぎた今でも、その大手チェーンのハンバーガーは、私にとってごちそうで、誕生日にはつい食べてしまいます。

 

そんな私、学生時代にそのハンバーガー屋さんでアルバイトをしていました。アルバイト初日、先輩店員が開口一番私にいったことは今でも忘れません。

「うちはファーストフードじゃないから。時間がかかっても美味いものを出せ。」

 

 学生時代、概ね腹を空かせていた私は、美味しいものに加えて、「お客さんはボリュームのあるものを喜ぶだろう」と考え、トッピングやソースなど、規定の量を上回るハンバーガーを自主的に提供していました。

 

 ある日、バイク野郎の先輩アルバイトと二人で店番をしていたとき、まだすこしぎこちない感じのアベックが来店しました。注文を受け、私はいつもの感じで大量のレタスを挟んだテリヤキバーガーを作りました。それをかごに載せ、アベックのもとに運ぼうとしたとき、一緒に働いていたバイク野郎が私を制止しながらこう言いました。

「おめぇ、そんなデカいテリ、どうすんだ!あのコが彼の前でデカい口を開けられると思ってんのか?かわいそうだろ!」

 当時の私は、食事について「量が多い=Best」と考えていました。しかし、万人がそうではない、いやそうではないときがある、二十歳前後の私はそんなことを学びました。爆音鳴らして深夜の街を疾走するバイク野郎から。
 
(小楠展央)

 

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