2018年11月20日火曜日

古事記から 「愛」イザナギ・イザナミ

地元の焼津神社(静岡県焼津市)で祀られている倭建命(焼津神社では「日本武尊」と称しています。)に深い興味を抱き育った私にとって、倭建命の物語が記されている古事記は身近な、そして貴重な資料でした。
その古事記は、天武天皇の命で舎人の稗田阿礼(ひだのあれい)が作成を始め、その後、太安万侶(おおのやすまろ)が完成させたとされています。
全3巻から成り、第1巻は「建国の経緯」、第2巻は「神武天皇から応神天皇までの歴史、そして、第3巻は「仁徳天皇から推古天皇までの歴史が綴られています。
同時期に編纂された歴史書「日本書紀」とは違い、古事記は物語として書かれているところが興味深く、楽しめる内容となっています。
さて、「愛」をテーマに古事記の中で国を造った神「伊邪那岐(イザナキ)」と「伊邪那美(イザナミ)」の話しをしたいと思います。
この二神は、この世で初めて人のかたちをして登場する仲睦まじい夫婦神です。
火の神を生んで大きな火傷を負い、命を落とした妻伊邪那美は黄泉の国へ下りました。諦めきれない夫伊邪那岐は、黄泉の国へ行き、帳を挟んで、伊邪那美に蘇って共に国造りをしようと懇願します。伊邪那美は、一旦断るものの、食い下がる夫に、黄泉の神に話をしてくるから暫く待つように言います。その際、伊邪那岐にけして帳の内側を見てはならないと約束させました。しかし、我慢できない伊邪那岐は、覗いてしまいます。そこにはゾンビの姿に変貌した伊邪那美がいました。伊邪那岐は驚愕のため一目散にその場を逃げ出します。伊邪那美は、約束を破った伊邪那岐に激怒し、雷獣や鬼女を従え伊邪那岐を追いかけます。あの世とこの世の境まで逃げ延びた伊邪那岐は、その境に岩を置き結界を張り、今後行き来できないようにしました。これに対し伊邪那美は「これからは1日に千人の人を黄泉の世界に引きずり込む」と言い、伊邪那岐は「ならば、一日に千五百の産屋を作る」と応えたそうです。実に生々しく悲惨な場面でした。
そのような場面であるにもかかわらず、本日「愛」をテーマにすると申し上げたのは、この二人の発していた言葉に起因します。夫は恐怖と驚愕、妻は激怒しているのにも拘わらず、相手を互いに「愛する人よ」「愛しい人よ」と呼び合っていたのです。このような事態に陥ってはいるが、かつては愛し合った仲であり、あなたは私の愛する人だと呼び掛けているのです。古事記が編纂された一千三百有余年前には、夫婦間において純粋な愛情表現がされていたのでしょう。見習いたいものです。
(早川清人

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