2010年3月25日木曜日

話し合いの余地なし

滞納家賃が何十万円もたまってしまい、家主さんが借主一家を追い出す場面に立ち会った。
「明渡しの強制執行」と呼ばれるものだ。
朝10時、執行官、引っ越し業者5~6名と4トントラック1台、鍵屋さん、大家さん夫婦と私が、田舎町の閑静な住宅街に集まる。そのものものしさに、ご近所の皆さんも遠巻きに様子を伺っている。
1か月前に通告された退去命令を無視し、家の中には、ご主人、奥さん、成人前後の娘と、黒猫が1匹残っていた。
玄関先で大家さんに土下座をして許しを乞うご主人を尻目に、定刻、執行官の説明が始まる。
途端に崩れ落ちる奥さん。呼吸が荒く、震えが止まらない様子。
娘が救急車を呼ぶ。サイレンが近づき、奥さんと付き添いの娘を連れ去るまでの約20分間の中断の後、執行官の合図で強制執行が始まる。
引っ越し業者は手際良く荷物を運び出し、鍵屋さんは慣れた手つきで玄関ドアのカギ交換を行う。
1時間ほどで作業は終了。
家の中に残されたのは、不要物の山と猫1匹だった。

ともすれば情に流されてもおかしくない状況の中、大家さん夫婦は、冷静にご自分の権利の実現に終始していた。
話し合いとは対極な半日。これも私たちの仕事なのだ。

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