2017年1月19日木曜日

表情の剽窃


まっすぐな道を歩いていると、向こうからも人が歩いてくる。

たいてい、あぁ、ちょっといやだなぁ、と思いますね。

そりゃあ、顔見知りならまた別です。(と言って、必ずしも心安くなる場合ばかりではありませんがね。)

ただ、往来を歩いていて、向こうから人が歩いてくるとき、たいていは知らない人です。おじさんかもしれないし、若い女性かもしれない。こどもかもしれないね。

ちょっと断っておきますが、都会のビルの下なんかを想像しないでくださいね。あっちからもこっちからも人が歩いてきて、すれ違う数なんて数えてたらきりがない、こういうところの話ではないんです。

ほら、思い出してください。田舎の田んぼのあぜとか、川の堤防とか、工場の塀に面した通りとか、まっすぐに伸びた道の先、はるか数十メートル先から、じわじわと近づいてくる知らない人。辺りにはほかに生物の気配はない。

あれ、目線はどうすればいいんですかね?じっと見つめるのも変だけど、前方に向かって歩いていると、どうしたって視界には入るわけで。気付いてないフリをすればいいのかな?気付いているけどまったく気にしていないフリをすればいいのかな?でもすでに気にしてしまっているのでな。

このとき、相手を捕捉してから時間にすると1~2分ですかね?いろんなことを考えますね。あぁ、ちょっといやだなぁ、なにか良くない人じゃないといいなぁ、いや、向こうもそう思っているかな?暗い顔でメガネかけて俯いて歩いている30前後の男だからなぁ、若い女性は多少なりとも警戒しているだろうなぁ。いや、それでいいんですよ!?ちゃんと警戒するべきである!!もちろん僕はそんな狼藉はしないから、良かったですね、すれ違うのが僕で・・

なんて思いながら、用もないのに携帯なんか取り出してチェックしたりする。川面に浮かぶカモに急に見とれ始めたりする。

そうこうするうちに、いよいよ合流地点がくるわけです。このとき、やはりお顔を確認します。万が一知っている人かもしれないし。そういえば、あまり目が合うことはない気がするので、相手はあまり気にしていないのか、逆に意識的に目を逸らしているのか。


そしてそして、ここからがいよいよ本題なんですが、こうしてチラっと見た相手の表情を、なぜか私、瞬時に真似てしまうんです。眉間にしわを寄せているとこちらも寄せ、急いでいる顔をみるとこちらも急ぎ顔になり。

これは瞬時に。そんなことするつもりもないのに。そして一瞬後、なにやってんだ、と思いながら表情を戻すのです。

心理学的にいうと。わかりません、たぶんなんらかの説明があるでしょう、でも調べません。

実はこれ、だれかと話し合いをしているときにも同様の作用が生じているのではないかと考えています。ただ、統計的な分析はまだしておりませんので、そのうち。


以上です。


(青野雅之)


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