2018年8月29日水曜日

家事事件の勉強会に参加しました。


先日、と言ってももう1,2カ月前になりますが、”ふらっと”の家事事件の勉強会に参加してきました。(”ふらっと”では、現在、140万円を超える紛争事件及び家事事件について扱えるように、法務省の認証を取得する準備をしています。)
講師は、裁判所で調停委員もされている当会の会員です。
裁判所における家事調停の運用や実務的な話を中心にご講義いただきました。
その中で、裁判所における家事調停、特に離婚調停においては、裁判所の調査官による役割がすごく大きいと感じました。
“ふらっと”では、調査官のような役割を担う担当者を置くことは現実的には不可能だと思います。
それを考えると、”ふらっと”で安易に離婚調停を扱えるようにすることに戸惑いを感じてしまいました。
職域の問題だけでなく、弁護士会が司法書士会の調停センターで家事事件を扱えるようにすることについて、積極的な賛成をしないのも最もだなぁと思います。

ところで、講師の先生の体験では、女性が離婚を考えるとき、離婚調停を申し立てる2,3年前から離婚を考え始め、数年間、夫の様子を観察し、やはり離婚しかないと思って調停を申し立てることが多いということでした。
それに対して、夫はその数年間、妻の気持ちの変化に何ら気づかず、突然、調停申立されたり、妻が出て行ったりするので、「なんで離婚なの?今まで問題なかったのに!」という反応をすることが多いそうです。
夫の側からすると、理由もわからないまま離婚を要求され、養育費や財産分与、場合よっては慰謝料の請求をされることに納得いかないですよね。
でも、妻の側は、すでに十分な時間をかけて離婚を決意しているので、そこから復縁することは、なかなかむずかしそうです。

私は、”ふらっと”が夫婦間の問題に関して、活躍できるとすれば、ここにヒントがあるのではないかと思いました。
“ふらっと”の調停は、裁判所の調停と違い、当事者の直接の「対話」を重視しています。したがって、代理人が就いた場合でも、調停当事者本人に出席していただき、相手方と同席して、抱えている紛争について直接話し合っていただき、紛争の解決策についても当事者自ら考え合意に至る、そのプロセスを調停人が支援しています。
 しかし、例えば、夫婦間に未成年の子がいるような場合に、未成年の子の福祉を考え様々な調査・調整を行う調査官の役割を担う担当者を”ふらっと”に置くことは現実的には不可能であり、裁判所の調停と同様のことを行うことは、”ふらっと”ではできません。
 
 むしろ、”ふらっと”ができること、それは、当事者の一方(先ほどの事例では妻)が離婚を考えだしてから、実際に離婚の決意に至る前に、夫婦の関係について、お互いの考え方・価値観の違いを認識し、円満な夫婦関係を築くにはどうすればいいのかを話し合ってもらうこと、裁判所の調停でいえば、「夫婦関係調整調停(円満)」を”ふらっと”の調停で利用してもらうことが、最も”ふらっと”の特徴を活かせる調停になるのではないかと思います。
 実際に、離婚を決意していないのに夫婦間の不満に、”ふらっと”の調停を利用していただくというのは、相当ハードルが高いなとは思います。
 ですが、これができれば、離婚しなくていい夫婦を増やすことに少しでも貢献できると思います。
 ここは、我々運営委員が、如何に”ふらっと”を利用しやすいように運営できるかにかかっているのでしょうね。
運営委員 井上史人

2018年8月10日金曜日

「ADR法制の改善に関する提言」(一財)日本ADR協会(2018年4月25日)

 センター長の小澤です。

 日本ADR協会では、本年4月25日に、ADR法制の改善に関する提言をされています。
 とても重要なことばかりです。

 http://japan-adr.or.jp/

 ふらっととしましても、このような動きにきちんと対応していく必要があると考えています。

 概要のみ紹介しておきます。 

提言1:ADRと裁判手続等との関係に関する理念の明確化
ADRと裁判との関係、また、民間型ADRと民事調停等の司法型ADR及び行政型ADRの関係について、両者が紛争解決手段として対等の関係にあることを規定上明確化すべき。

提言4:大規模災害時等における規則変更等の認証の迅速化等
時限的に、規則から外れたADRを行うことを許容すること、認証を短期間(数日など)で行うこと(緊急認証)などの取扱いを検討すべき。

提言6:ADR前置事件の拡大
現状の他にADRを前置すべき事件がないかにつき検討を加え、必要な場合には、民事調停等の前置事件を拡大するとともに、当該事件につきADR法第27条による特例の対象とすることを検討すべき。

提言7:裁判所等によるADR利用の勧奨・付ADR
訴訟事件が係属する裁判所等は、適当と認めるときは、事件の性質に応じて適当と認められるADR機関において和解交渉をすることを勧めることができるとする旨の明文規定を設けるべき。さらに、必要と認めるときは、事件を認証ADRの手続に付すことができる旨の規定を設けることを検討すべき。

提言8:手続応諾義務の適用範囲の拡大
現在一部のADRで導入されている手続応諾義務に関する規律の適用範囲をさらに拡大する可能性について、検討に着手すべき。

提言9:ADRにおける和解合意に対する執行力の付与
ADRにおける和解合意に対して、当該認証ADR機関の選択により、裁判所の執行決定による執行力の付与を可能とすべき。

提言10:秘密の取扱いについての規定の整備
調停に関連する情報について,手続実施者及びADR事業者の守秘義務を規定することにより、守秘義務の対象となる事項について民事・刑事訴訟での証言拒絶や捜査機関等第三者からの照会に対する回答拒絶を可能にするための根拠規定を整備すべき。

提言2・15:ADR利用促進のための国の責務の明確化、国側の体制強化
ADRの担い手の資質の向上や裁判所等とADRとの適切な連携のために必要な措置を講ずることについての国の責務を、規定上明確化するとともに、内閣としてADR利用促進計画を閣議決定する、省庁間の連絡会議を積極的に実施するなどの措置をとるべき。

日本司法書士会連合会 司法書士会調停センター担当者会議

 センター長の小澤です。

 本年も日本司法書士会連合会、紛争解決支援対策部、ADR WT主催の司法書士会調停センター担当者会議が9月21日に開催されます。

 各調停センターの運営状況や課題等に関する情報の共有化を図るとともに、担当者間の意見交換の機会を設け、協働する司法書士会を増やすこと及び各調停センターのさらなる発展を目指すことを目的としています。

 具体的には、
①グループワークにおいて、ADRに関わる人材を増やすためにADRに関与することで得られるメリットを事前のアンケート結果を基に言語化することとし、
②その後の情報交換会においては、web調停・遺産分割調停を実施できるような変更を検討しているセンターの報告を踏まえて、大相続時代・裁判IT化時代における司法書士会調停センターの役割などについての意見交換を行い、
これまで以上に市民に身近な存在を目指すことを共有することとしたいと考えています。

 もちろん、静岡のふらっとの取り組みについても、全国の調停センターが注目していると思います。
 有意義な会議になることを期待しています。