2009年12月14日月曜日

民法改正と和解契約

運営委員の井上尚人です。

司法書士には青年会といって、若手の司法書士で構成する任意団体があります。静岡にも静岡県青年司法書士協議会があり、毎日活発に勉強会を行っています。

その東部地区の本年のテーマは「民法改正」です。
法務大臣は、諮問第88号で、民法債権法の分野について数年後の改正を目指し法制審議会で議論するよう付託しました。
法務省は、民法の中でも当面は債権法の分野のみ改正を検討するようなので、東部地区の勉強会も、債権法の分野のみに的を絞り勉強をしていく予定です。

さて、債権法の中に「和解」という章があります。当然、「和解」についても、検討対象になっています。私たち”ふらっと”が行う当事者間の合意も、この和解契約が下敷きになっているわけです。

”ふらっと”でもそうですが、私たちの司法書士業務においても、紛争が終結したときは、当事者間で行われた合意を書面にします。
私たちは、学者でなく実務家なので、この合意=和解契約について学問的に考察し、その視点で和解案を作成することは通常ありません。主に、①紛争の蒸し返し防止、②合意内容の実現を望んで契約します。
つまり、和解契約をすることについては、和解後の事後的な紛争防止という極めて実務上の視点しか持っていないと言っても過言ではありません。

しかし、学問の視点では、和解後への留意だけでなく、和解契約が存するための要件、つまり和解前の段階についても考察を行っています。

参考書によると、和解契約の要件は伝統的に「争いが存在すること」「互譲があること」なのだそうです。ただ、昨今はこの要件よりも当事者の合意そのものの存在や、和解の確定効を重視する学説も有力になっているようです。

今回の改正においては、和解と錯誤に関する規定として、「争いの対象となった事項に関係する事実について錯誤があった場合は、取り消すことができない」という内容の条文を新設するかどうか検討されるようです。
”蒸し返し防止”について明文を置いてはっきりさせる意図のようです。

正直、今回の勉強をするまで、和解契約について多角的に分析した学説が複数あることを知りませんでした。和解については、紛争の蒸し返し防止機能くらいしか意識したことがありませんでしたが、和解は”ふらっと”の根幹にも関わるところです。
今後は法制審議会の議論に注意し、使いよい条文になるよう意見していく必要がありますね。

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