2018年6月3日日曜日

どう解く?


こんな物語があります。
・腕はいいが、あまり売れない手品師がいた。
・手品師は、大劇場のステージに立てる日が来るのを願って腕を磨いていた。
・ある日、手品師は、道端で小さな男の子と出会い、手品を披露する。そして次の日も見せてあげると約束した。
・その日の夜、手品師に、明日、大劇場に出られるチャンスが舞い込む。
・しかし、手品師は、男の子との約束を優先して、大劇場に出られるチャンスを断った。


さて、みなさん。
    大劇場のステージに立てる日を夢見て練習する手品師の気持ちを考えてみましょう。
    男の子との約束を優先した手品師の気持ちを考えてみましょう。
    手品師の行動を振り返って、自分のこれからの生活に活かせることは何でしょうか。

できましたか? それでは、こんな設問はいかがでしょう。
    手品師はどうして大舞台を断って男の子のもとへいったのでしょうか。
    手品師が大舞台を断って自分のところへ来たと知った男の子はどう思うでしょうか。
    もし、あなたが手品師の立場だったら、どういう行動をするでしょうか。
    手品師も男の子も、どちらもよい結果となる方法はなかったのでしょうか。
    「誠実」とは、どういうことでしょうか。

新学習指導要領において、小中学校における道徳の授業が「特別の教科」になることは、みなさんご存知ですか。「教科」というと、国語や算数のように数値による評価がされそうですが、道徳は数値などによる評価はなじまないと考えられることから、「特別の教科」という枠組みで実施されることになりました。

ちなみに、学習指導要領の改訂は、小学校は平成32年度から全面実施、中学校は平成33年度から全面実施されますが、道徳の教科化については、小学校は30年度から、中学校は31年度から前倒しで全面実施されます。

みなさんが受けた道徳の授業を思い出してみてください。
「リアリティがない」「予定調和」「退屈」・・こんな言葉が浮かんでくるのではないでしょうか。
これまでの道徳の授業はというと、ある物語を紹介し、主人公の行いが正しいことを前提として、例えば上記の例でいえば、①~③のような設問を通して、「誠実」という価値に収斂する授業であったようです。
それが、今般の「特別の教科」化に伴い、「考え、議論する道徳」へ質的転換がなされるということをある教育通のかたから伺いました。例えば、上記の例の④~⑧のような設問を通して、「誠実にもいろいろな形があり、相手のことだけを考えて行動することが必ずしも誠実とは限らない。」「誠実とは、自分または相手が一方的に犠牲になって叶えるものではなく、お互いにとってよい方法を考えることが「誠実」につながると考える。」「約束の中身をしっかり考え、さらに自分や相手の状況を踏まえて結論を出すことが重要ではないか。」など、物事を多面的・多角的に考えたり、自分ごととして考える授業になるというのです。

私はこの説明を受けて、マイケル・サンデルの対話型授業の風景が浮かびました。新学習指導要領が示すこんな授業が経験できたら、道徳の授業は、生きるうえで大切なことを教えてくれる、素晴らしい時間になることでしょう。

“ふらっと”の理念と共通するところが多々あると思い、道徳が「特別の教科」になることについて紹介させていただきました。

増田真也

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