2016年4月22日金曜日

熊鈴

 毎年春になるとカレンダーを眺めては山行計画を考え始める。昨今の登山ブームで、夏山はどこも人々でごった返していて、連休ともなると、どこの山小屋も満員で、ピーク時には1枚の布団に23人という状態になる。夜トイレに起きたら戻る場所が無かったなどということも珍しくない。昨年のシルバーウィークの5連休などは大変な混雑で、部屋に入りきらずに通路の廊下も一杯であった。

そんな山小屋の混雑を避けるため、私は重いテントを担いで山に登るのであるが、最近私を悩ませているのが熊鈴の存在である。山中で熊に遭遇することを避けるため鈴を鳴らし、自分の存在を野生動物に知らせようとするものである。北海道などでは、小学生が熊と遭遇するのを避けるため、歌いながら登下校するという話を聞いたことがある。

私は、山中で熊と遭遇したことが無いが、動物園の柵越しに対面しただけでも、恐怖を感じるのであるから、柵が無ければその恐ろしさは計り知れないであろう。

熊も人の存在に気がつけば、人との遭遇を避け、遠巻きにこちらを観察しているようであるが、偶然の出会い頭が最も危険で襲われる可能性が高い。これを避けるために熊鈴を鳴らすのであるが、この鈴を所かまわず鳴らし続けるので敵わない。

山道具のショップには、必ず安くない熊鈴が置いてあり、皆これをザックに付けるのである。たまに「チリンチリン」鳴るなら可愛げもあるが、ずっと鳴り続けるのであるから始末が悪い。

私の山行は、単独行が殆どなので、人気の無い山歩きの場合には、熊鈴が必携なのだが、私は消音機能付を愛用している。人と頻繁に行き交うような場所では、うるさいので音が鳴らないようにしている。

夏の人気の山域では、登山道が銀座なみの人込みで、そんな場所には熊ものこのこ(・・・・)現れはしない。それにもかかわらず猫も杓子も「チリンチリン」やるのでたまらない。思わず前を歩いている人の鈴をむんず(・・・)と摑んで「あなたが歩く道には熊は出ませんよ」と伝えたい衝動に駆られる。富士山でも同様に熊が出ないにもかかわらず皆「チリンチリン」やるのである。

鈴の一番近くにいるのは、鈴を付けている本人なので、その人が一番うるさい筈であるが、自分の出す音は気にならないらしい。


宮内豊文

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