下校は近所の同級生「ふみくん」といつも一緒だった。
ある日の下校時、ふみくんは、僕のランドセルを女子トイレに投げ入れてしまった。
僕は、なぜそんなことをされたのかが全く分からず、頭にきてランドセルを拾わずにそのまま帰宅した。
翌日、僕はふみくんを無視した。同じクラスなのに一言もしゃべらなかった。
その日の夜、僕は急に思い出した。僕がふみくんを小馬鹿にした言葉を発していたことを。僕は、顔が急に熱くなった。明日、ふみくんに謝ろうと思った。
明朝。ふみくんを見かけた僕は、言葉が出なかった。
「今さらなんて言えばいいんだろう。」「最初に謝るのはイヤだなあ。」「ランドセルを投げられて恥ずかしい思いをしたのは事実だし・・。」
謝りたい気持ちはあるけれど、恥ずかしさから、謝らない理由を自分が作り上げている。
数日後(だったと思う)、同じクラスの「ゆきちゃん」が僕とふみくんに声を掛けてきた。「しんしん(僕のあだ名)ら、なんでしゃべんないの?」
その場を詳しく思い出すことができないが、ゆきちゃんが間に入ってくれたおかげで、僕とふみくんはランドセル事件について互いの認識と想いを述べあった。僕はふみくんに謝り、ふみくんもまた僕に謝り、一件は落着した。
あのとき、ゆきちゃんがいなかったら、僕ら二人はいつまで顔を合わせなかったんだろう。引くに引けない状況のとき、仲を取り持つ第三者のなんとありがたいことか。
ゆきちゃんとふみくんは、今も大切な友達です。
あの日のランドセル。親にしこたま叱られて、夜中取りに行ったな~
増田真也
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