2016年9月4日日曜日

借家やアパートで家具固定はできるのか?

 
 借家やアパートにおいて、L字金具やベルト式の器具を使用し、家具を壁や柱にネジで固定することが、善管注意義務違反とならないか。司法書士は、そんなことをつい考えてしまう。
 
 私なりの結論としては、建物所有者が承諾すれば別段、承諾しないのにそのような方法で家具を固定すれば、現在の社会情勢では、善管注意義務違反と判断される可能性がある、と考えている。

 しかし、過去の地震災害における家具転倒による被害を省みれば、人命を守ったり、負傷を防いだりするために、持ち家のみならず、借家・アパートにおいても、堅固な家具固定ができる環境を調えていくべきだろう。「何とかならないものか。」、つい思案してしまう。おそらく、建物所有者も、「部屋の壁や柱を穴だらけにしてほしくない。でも、災害のときに入居者に万一のことがあったら取り返しがつかない…。」、そう逡巡しているのではないだろうか。

 そんな思いを巡らしていたところ、袋井市が行っている「賃貸住宅における家具等転倒防止器具給付事業」が目に飛び込んできた。その事業は、部屋の壁に防災レールとベルトの設置を助成・促進するもので、それらを用いて家具固定をするよう入居者に奨めるのである。この方法であれば、建物所有者にとっては、災害時の被害を低減できることはもちろん、壁等がネジ穴だらけになる事態を回避でき、さらには他の物件との差別化も図ることができよう。また、入居者にとってみても、家具を固定する器具を購入する負担が軽減されるほか、DIYで固定する際に壁の強度を心配しながら作業する必要がなくなり、さらには模様替えに伴う家具移動も可能である。

 借家やアパートにおけるネジ止めによる家具固定の問題は、現状のままでは、建物所有者、入居者のみならず、借家やアパートに関わる事業者にとっても、災害時の人命に関わるだけに、心の晴れない状態にあるといえるだろう。袋井市の事業のようなウィンウィンの輪が広がっていけば、災害時の被害を少しでも減らすことができよう、そう期待してやまない。


小楠展央

 

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